顔の脂肪が少なくてもリフトアップはできる?
こんにちは。
Onu 医院 院長のパク・ヒジンです。
最近、リフトアップ治療を希望してカウンセリングに来られる患者様のニーズは、非常に速いスピードで変化しています。
以前は、施術を受けたあと数か月かけて徐々にコラーゲンが増え、少しずつ変化が現れるのをゆっくり待つ方が多くいらっしゃいました。
しかし最近では、大切な撮影や結婚式などの予定を間近に控え、
“施術直後からフェイスラインがすっきり整って見える効果がほしい”
と希望される方が明らかに増えています。
このように、即時的な輪郭変化へのニーズが高まるなか、
755nm、810nm、1064nmなどの複数波長を用いたダイオードレーザーをベースとする、いわゆる「即時型コントゥアリング機器」が、リフトアップ治療における新たな選択肢として注目されるようになりました。
一方で、施術直後の明確な変化を求めながらも、リフトアップ治療そのものに対する不安も、これまで以上に大きくなっているのが現状です。
私がカウンセリングで毎日のように耳にする質問があります。
“先生、リフトアップをすると横頬のくぼみがもっとひどくなりませんか?”
“もともと顔に脂肪が少ないのですが、シュリンクのようなHIFUを受けても大丈夫ですか?”
“リフトアップを失敗すると頬骨ばかりが目立って、かえって老けて見えると聞いたのですが……”
実際、少なくない患者様が、横頬のくぼみや不要なボリューム減少、いわゆる頬こけの副作用を心配し、本来必要な引き締め治療まで避けてしまうことがあります。
なかには、別の医療機関で
“顔に脂肪が少ないので、HIFUリフトは絶対に受けないほうがいいです”
と説明された経験がある方や、
顔全体に同じ深さ、同じショット数で一律に治療を受けた結果、実際に横頬がくぼんで見えるようになり、その経験がトラウマになっている方もいらっしゃいます。
治療を担当する医師としてお伝えしたいのは、
こうした副作用や不安は、必ずしも機器そのものが原因ではないということです。
むしろ、顔の脂肪や軟部組織をひと続きの大きな塊として捉え、すべての部位に同じ方法でエネルギーを照射する画一的な治療設計に限界があるのです。
---
1. 解剖学的アプローチ:顔はひとつの脂肪の塊として老化するわけではありません
私たちはよく、
「年齢とともに顔の脂肪が減って、たるんでくる」
とひとまとめに表現します。
しかし、実際の人体の老化はそれほど単純ではありません。
解剖学的に見ると、顔面の皮下脂肪は、複数の独立した脂肪区画(Fat Compartment)に細かく分かれて存在しています。
さらに、それぞれの脂肪区画の間には、
浅筋膜(Superficial Fascia)から皮膚の真皮層(Dermis)までつながる、網状の線維性隔壁(Fibrous Septa)が存在します。
これらが顔全体の形態を支えるRetaining Systemを形成しています。
アジア人女性を対象に行われた顔面CT解析研究では、
加齢が進むにつれて、眼窩下脂肪(Infraorbital fat)やほうれい線周辺の脂肪(Nasolabial fat)は、むしろ厚くなる傾向が報告されています。
一方で、頬の中央部にある表在性頬脂肪(Superficial cheek fat)は薄くなり、選択的な萎縮が起こるとされています。
特に、ほうれい線上部の脂肪の下方部分が厚くなる現象は、
ほうれい線をより深く見せ、中顔面を下垂して見せる要因のひとつと考えられています。
下顔面も同様です。
いわゆるジョール部分の脂肪、つまりJowl fatの下部や深部脂肪は、加齢とともにかえって厚くなる一方で、
その他のフェイスライン周辺では、脂肪の萎縮と肥大が部位によって異なって起こります。
つまり、一人の顔の中で次のような変化が同時に起こり得るのです。
くぼみと突出感
前頬や横頬では脂肪が減少してくぼみが生じ、
その結果、相対的に頬骨がより目立って見えることがあります。
膨らみと重さ
一方で、ほうれい線上部のNasolabial fatは厚くなり、中顔面が重く見えることがあります。
また、フェイスライン下に突出したJowl fatが下顎縁を覆うことで、フェイスラインがぼやけ、途切れたように見えることもあります。
このような状態の患者様を単純に
「顔に脂肪が少ない人」
と一括りにし、すべての引き締め治療や脂肪減少治療を完全に排除することは、解剖学的に適切とは言えません。
反対に、顔全体に同じ深さ・同じ強さで脂肪減少エネルギーを照射することも、深刻なボリュームロスにつながる可能性があります。
リフトアップ治療を設計する前には、
必ず次の3点を厳密に評価する必要があります。
すでに加齢によって萎縮しており、必ず守るべき脂肪区画はどこなのか。
相対的に厚くなったり下垂したりして、老化した印象をつくっている脂肪区画はどこなのか。
脂肪量とは別に、構造的な収縮や弾力的な支持が必要な深さと位置はどこなのか。
---
2. 脱毛レーザーから「即時型コントゥアリングレーザー」へ
755nm、810nm、1064nmなどの波長を同時に使用する多波長ダイオード機器は、
もともとさまざまな人種の肌色や毛の深さに対応するための「脱毛機器」として登場しました。
初期の臨床研究も、主に脱毛効果と安全性に焦点を当てたものでした。
しかしその後、医療現場で研究が続けられるなかで、
この多波長エネルギーが、皮膚再生、タイトニング、さらに輪郭を整えるコントゥアリングにも活用できる可能性が示されるようになりました。
多波長ダイオードレーザーを繰り返し照射した際、
真皮層のコラーゲン(Collagen)や弾性線維束(Elastic Bundle)の組織学的な再生が促される可能性を示した研究や、
脂肪分解(Lipolysis)、フェイシャルスカルプティング(Facial Sculpting)への応用可能性を示す臨床研究も報告されています。
もちろん、市場にある多波長機器はそれぞれ出力、照射面積、冷却プロトコルなどが異なります。
そのため、過去の先行研究の結果をPortraの臨床効果とそのまま同一視することはできません。
ただし、多波長ダイオードレーザーが単なる脱毛用途を超えて、
皮膚再生やフェイスコントゥアリングへ応用できる可能性を示す、初期の科学的根拠として考えることはできます。
---
3. Portra Quattroによる即時的な輪郭収縮
Acute Contour Contractionのメカニズム
Portra Quattroを受けた患者様からは、
単に「肌が引き締まった」という感覚だけではなく、
“顔全体がすぐにピタッと締まった感じがする”
“ほうれい線横やジョール部分の重さが、すぐ軽くなった感じがする”
といった表現をよく耳にします。
しかし実際には、新しいコラーゲンが合成され、真皮構造がリモデリングされるまでには、
少なくとも数週間から数か月という生物学的な時間が必要です。
そのため、施術直後に感じる即時的な変化を、新しいコラーゲンの生成だけで説明することはできません。
その鍵のひとつが、
既存コラーゲンの熱収縮(Collagen Thermal Denaturation)です。
十分な熱エネルギー、いわゆるThermal Doseが組織に伝達されると、
コラーゲンの三重らせん構造(Triple Helix)が熱変性を起こし、線維の長さが即時的に短縮します。
これは単なる温度上昇だけで起こるわけではなく、
曝露時間、組織内の水分状態、機械的刺激など、複数の要素が組み合わさることで生じる不可逆的な反応です。
ただし、この即時的な収縮が永久に維持されるわけではありません。
なぜなら、顔はコラーゲンだけで構成されている組織ではないからです。
皮膚の下には、
脂肪小葉、線維性隔壁、血管、水分などが複雑に絡み合った構造があります。
そのため、Portra施術直後に感じられる劇的な輪郭変化は、
以下のような複数のメカニズムが組み合わさって生じる
急性輪郭収縮(Acute Contour Contraction)
として理解するのがより適切です。
- 既存コラーゲンおよび線維性隔壁(Septa)の急性熱収縮
- 皮下脂肪を包むコラーゲンネットワーク構造の形態変化
- ハンドピースが皮膚を押す物理的接触圧による脂肪小葉の一時的な圧縮
- 一時的な血流変化や組織内水分の再分布
初期の水分変化や一時的な圧迫反応は、時間の経過とともに徐々に回復します。
そのため、施術直後のシャープな印象が、そのまま100%長期間維持されるわけではありません。
したがって、
この即時的な収縮効果と、長期的なコラーゲンリモデリングの効果は区別して考える必要があります。
そして、その変化をより長く支えるためには、補完的な治療設計が必要です。
---
なぜ多波長レーザーはRFよりも即時効果が大きく見えるのか?
ThermageやOligioのようなモノポーラRF機器も、
真皮層や線維性隔壁に熱を伝え、即時的な収縮を誘導します。
ではなぜ、Portraのような多波長レーザーでは、
施術直後にフェイスラインが整って見える変化がより目立つのでしょうか。
脂肪区画のProjectionを抑える
Portraは広い照射面と高速の反復照射により、
ほうれい線上部やジョール部分のような、下垂して突出した脂肪区画全体に広く素早く熱を蓄積できます。
そのため、突出感や厚みを抑え、全体の輪郭をよりフラットに整えるのに適しています。
深層まで熱を伝える
Portraを使用した近年の解剖学的研究では、
多波長エネルギーを重ねて照射するStackingを行うことで、
熱が表在真皮だけにとどまらず、筋膜(Fascia)レベルまで到達し得ることが示されています。
これにより、より深い組織の収縮も同時に期待できます。
顔の陰影が変化する
ほうれい線上部の重さや口元のジョールの突出がわずかに減るだけでも、
顔に生じていた濃い影が軽減されます。
軟部組織そのものが大きく垂直方向へ移動していなくても、
顔の明暗の境界が和らぐことで、
視覚的には顔がすぐにシャープになり、持ち上がったように認識されやすくなります。
---
4. Portra Quattro × Shurink Universe
相互補完的なデザイン
顔の輪郭リフトは、ひとつの機器だけを盲目的に信じて行うものではありません。
異なる原理と深さを持つ2つの機器を適切に組み合わせることで、
不要なボリュームロスを抑えながら、より精密なフェイスコントゥアリングが可能になります。
① Portra Quattro
全体輪郭を再構築するGlobal Contour Reset
Portra Quattroは、
755nm、828nm、940nm、1064nmの4つの波長を同時に使用する機器です。
特に新たに加わった940nmの波長は、
水分と脂質(Water & Lipid)への吸収特性を持ち、深く広い層へ熱を均一に届けることに寄与します。
広いチップと強力な接触冷却システムを備えているため、
突出したNasolabial fatやJowl fat周辺の重い軟部組織を広範囲に加熱し、
顔全体のシルエットを一度に滑らかに整える「大きな設計」に向いています。
√ 限界点
一方で、チップ面積が比較的大きいため、
ごく狭い局所部位をミリ単位で削るように精密に整える治療には向いていません。
また、急性収縮効果には優れていますが、
長期的な持続性をPortra単独ですべて担うには限界があります。
② Shurink Universe
深さと位置の空間解像度を高めるDetailer
Portraが顔全体の大きな輪郭や重さを整えるとすれば、
Shurink Universeは、その土台の上にさらに細かな解像度を加え、ディテールを仕上げる役割を担います。
HIFUには、
周辺組織への不要な刺激を抑えながら、
狙った深さ、例えば3.0mmや4.5mmに熱凝固点(TCP)を形成できるという特長があります。
MPモード(線状照射)
エネルギーを線状に広く連続して照射します。
Portra施術後にもわずかに残った局所的な脂肪区画、
例えば、ほうれい線のすぐ上に残る狭い脂肪ポケットなどを、細かく調整する際に活用します。
Normalモード(点状照射)
点状の熱凝固点を密に配置します。
脂肪量は減らすべきではない一方で、
構造的な支持力や収縮が必要な、ゆるんだSMAS層にアプローチし、
支えとなるAnchorを形成する役割を持たせます。
さらに、Shurink施術後に起こる遅延性のコラーゲンリモデリングや、
弾性線維(Elastin)の再生反応は、
Portraによって生み出された即時的な収縮効果を、構造的に支える役割を果たします。
---
5. フェイスコントゥアリング設計
Preserve・Reduce・Anchorの3原則
オーダーメイドのBespoke Liftingは、
以下のような綿密な解剖学的評価をもとに設計します。
Preserve(温存)
目的:失われたボリュームを守り、副作用を防ぐ
すでに萎縮してくぼんでいる横頬、目の下、前頬骨下部などには、
エネルギー照射を極力避ける、または最小限に抑え、
本来の自然なボリュームを守ります。
「どこにエネルギーを照射するかを決めることと同じくらい、
副作用を防ぐために“どこを治療しないか”を決めることも技術です。」
Reduce(減量)
目的:加齢によるジョールや重いラインを整える
Portra Intensive Modeを使用し、
Nasolabial fatやJowl fatが存在する深い軟部組織に熱を蓄積します。
さらにDynamic Modeで、
真皮から皮下脂肪層に存在する線維性支持構造を広く収縮させ、
脂肪区画の突出感と重さを抑えます。
その後、
Shurink Universeの3.0mm〜4.5mm MP Modeを用いて、
残っている局所脂肪を深さごとに細かく調整します。
Anchor(支持)
目的:リフトアップの持続性と構造的支持を確保
Portra Intensive Modeを使用し、
retaining ligamentが存在する深さにエネルギーを意図的に強くStackingします。
これにより、
retaining ligamentおよび周辺の線維性支持構造の収縮を誘導し、
Anchoring Pointを形成します。
その後、
Shurink Universeの3.0mm〜4.5mm Normal Modeを使用し、
顔面外側部やSMAS層に独立した熱凝固点を配置することで、
構造的な支持と長期的なRemodelingを補完します。
---
リフトアップは、単純なショット数や機器名だけで決まるものではありません
現在、多くのリフトアップ機器が存在しますが、
すべての患者様に対して絶対的に優れている「唯一の機器」はありません。
どれほど高出力で高価な機器であっても、
患者様の解剖学的な皮膚特性、
顔の左右差、
脂肪分布を正しく評価しないまま、
画一的な方法でエネルギーを照射すれば、
それはリフトアップではなく、頬こけなどの副作用につながる可能性があります。
本当のBespoke Liftingとは、
患者様の顔の中で
何を守るべきか、
何を減らすべきか、
そしてどこをしっかり支えるべきかを、
医師が精密にDesignすることで完成します。
施術直後に感じられる滑らかなフェイスラインの変化と、
時間の経過とともによりしっかりとした弾力を目指したい方にとって、
科学的かつ繊細に設計されたBespoke Facial Contouringを検討することも、ひとつの選択肢になるでしょう。
Onu 医院では、
患者様一人ひとりの顔を解剖学的に深く分析し、
安全性を最優先に考えた診療を続けてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。